漢方治療エビデンスレポート
日本東洋医学会EBM委員会エビデンスレポート/診療ガイドライン タスクフォース
4.
代謝・内分泌疾患
文献
上馬場和夫, 許鳳浩. 交感神経β3受容体遺伝子多型と防風通聖散の効果との関連. 日本 東洋医学雑誌 2003; 54: S225.
蒲原聖可, 川上隆雄, 上馬塲和夫. 統合医療によるメタボリック・シンドロームの予防・ 診 断 ・ 治 療 に 対 す る 個 別 化 医 療 の 開 発 に 関 す る 研 究. 医 科 学 応 用 研 究 財 団 研 究 報 告
2009; 26: 399-403.
許鳳浩, 上馬場和夫, 小川弘子, ほか. 漢方薬の代謝への作用の個人差-防風通聖散の二 重 盲 検 ラ ン ダ ム 化 比 較 試 験 -. 東 方 医 学 2012; 28: 37-59. 医 中 誌 Web ID:
2012297727 MOL, MOL-Lib 1. 目的
防風通聖散が肥満を改善させるかどうか評価
2. 研究デザイン
二重盲検ランダム化比較試験 (DB-RCT)
3. セッティング
富山県の医療施設
4. 参加者
55-65歳の住民2000名に依頼状を郵送。同意を得た肥満者 (BMI≧25) から問診、血液
検査、心電図で心疾患や重篤な肝・腎疾患を持たず下痢のない例120名を抽出。
5. 介入
Arm 1: 実薬群70名。カネボウ防風通聖散細粒エキス製剤を2ヶ月間、7.5g 分2/日を食
間あるいは食後1時間以上経過後に投与
Arm 2: 偽薬群50名。5%防風通聖散エキス細粒を含有し、味・香り・色が同じで識別
不能のプラセボ薬を同様の手法で投与
6. 主なアウトカム評価項目
試験開始前, 2, 4, 8 週後の WHOQOL26、東洋医学的問診、血清生化学的指標、IRI、
HOMA-R
7. 主な結果
実薬群67名、偽薬群45名が試験を完了し、計112名について解析を実施。男/女比は
実薬群19/48、偽薬群11/34、アドレナリンβ3受容体遺伝子多型 (SNP) 保因者は実薬群
18名 (Arg hetero18) /67名、偽薬群18名 (Arg hetero15, Arg homo 3) /45名で、両群合わ
せて36名/112名 (32.1%) であった。実薬群で0.8 kgの体重減少を認めたのに対し、プ
ラセボ群では0.1 kgの減少で、両群間に有意差 (P<0.05) を認めた。実薬群をリスポン ダー群 (15名: 体重減少≧1.5 kg) とノンリスポンダー群 (16名: 体重増加≧0.1 kg) に分 けて比較すると、リスポンダー群で投与前の血圧と血清総蛋白がノンリスポンダー群 よりも有意に高値で、血圧については140 mmHg以上と高血圧に分類された。防風通 聖散による体重減少は重回帰分析により血圧の初期値と血清総蛋白の 2つの値で予測 できることが示された。総コレステロール値の投与前と実薬 8週間投与による値の減 少については、高コレステロール群でのみ有意差 (P<0.05) を認めた。SNPの有無で体 重減少の違いは認められなかった。
8. 結論
55-65歳の肥満者では防風通聖散によって体重改善効果が示唆される。
9. 漢方的考察
肥満で血圧と血清総蛋白が高値な方に防風通聖散が有効であることが示唆された。こ れは「実証」にあたると推測され、伝統的な記述を支持するものであった。
10. 論文中の安全性評価
記載なし
11. Abstractorのコメント
肥満者に対する防風通聖散の有効性を検証した貴重なDB-RCT。蒲原, ほか(2009) 、上
馬場, ほか (2003) として報告された短報の原著論文。CONSORTに準ずる記述は評価に
値する。漢方的考察で示唆されたように実証に対する防風通聖散のRCTも期待したい。
12. Abstractor and date
鶴岡浩樹 2010.6.1, 2013.12.31